はじめに
SF小説というと、アイザック・アシモフの「われはロボット」やジョージ・オーウェルの「1984年」、フィリップ・K・ディックの「電気羊はアンドロイドの夢を見るか?」などの海外作家による小説が有名です。これらはとても素晴らしい作品ですが、海外の名作は時として難解で、その国文化や時代背景を頭に入れて読む必要があります。そのため、あまり本を読まない人では、疲れてしまったり諦めてしまったりする事があると思います。
この記事では、あまり本を読まない人でも楽しめるような、日本人作家によるSF作品を紹介します。特に、春休みで時間に余裕のある学生の方がいれば、是非SFの世界にチャレンジしてみてください。
紹介小説一覧
伊藤計劃「ハーモニー」

画像参照「早川書房 ハーモニー〔新版〕: 書籍- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ」
21世紀後半、医療・福祉が発達し病気という物がほとんど無くなったユートピアのような世界。常に健康であることを是とし、個人の身体も社会のリソースの一部として考える。そんな世界に嫌気がさした少女達は、変わり者のミァハによる提案で自殺を選択する。13年後、死ぬことができなかった少女トァンは世界を巻き込む大混乱に、死んだはずの彼女の陰をみる……。
この作品は、青春小説のような雰囲気を持ちながらも、本格的なSFとして描かれた小説です。世界観に馴染むのにも時間がかからず、スムーズに読む事ができます。幸福な社会とは?そんな事を考えさせられる小説でした。
伴名練「なめらかな世界と、その敵」

画像参照「早川書房 なめらかな世界と、その敵: 書籍- 早川書房オフィシャルサイト|ミステリ・SF・海外文学・ノンフィクションの世界へ」
この本は、6つの短編から構成されるSF短編集です。その中でも特に面白いと思ったのは「ひかりより速く、ゆるやかに」です。
修学旅行帰りの新幹線が未曾有の災害に巻き込まれた。修学旅行を欠席し、取り残された生徒は、その謎と悲劇に立ち向かう。
文章も物語も美しく、無駄に感じる部分がないと感じる程に素敵な作品でした。SFにありがちな想像が難しい描写はなく、頭の中で映像が流れているかのように読む事ができます。読後感もさっぱりとしていて、爽やかな気分で読む事ができました。もちろん他の短編も面白く、どれを読んでも外れがない短編集でした。
森博嗣「彼女は一人で歩くのか?Does She Walk Alone?」

画像参照「講談社文庫 Wシリーズ|森博嗣ONLINE|講談社文庫|講談社BOOK倶楽部」
この本は、Wシリーズというシリーズの一作目に当たる本です。もちろんシリーズを通して読んでも面白いのですが、今回はこの一作目に絞って紹介します。
人工細胞で作られ、人との差異はほとんど無い人工生命体「ウォーカロン」。このウォーカロンと人とを識別する研究を行っていた研究者ハギリは、何者かに命を襲われる。
よく練られた設定から深い世界観が生まれ、読み進めるほど物語に引き込まれていく。そのような作品でした。また、同著者の別シリーズとも関わりがあり、それらを読んでいる人はもっと楽しみが広がります。読み込む程に楽しさが増していく素敵な作品でした。